目的に応じて選ぶ、クレジットカード国際ブランドとは?

クレジットカードは国際ブランドによって、使える場所やサービス内容が異なります。そのため、法人カードを申し込む際も、用途や目的に合った国際ブランドを選ばなければ、大事なときに役に立たないことも考えられます。ここでは国際ブランドについての基礎知識や選び方について解説します。

国際ブランドとは

世界中の加盟店で使える決済ネットワーク

国際ブランドとは、MastercardやVisaのように世界中の国で利用できる決済ネットワークのブランドのこと。現在、世の中で発行されているクレジットカードは、ほぼすべてが何かしらの国際ブランドを使えるようになっており、通常は1枚のカードにつき1つの国際ブランドが利用できます。カードによって選べる国際ブランドは異なり、複数から選択できるカードもあれば、1種類しか選べないカードもあります。

Mastercardのロゴが入ったカードは、世界中のMastercard加盟店で支払いができ、Visaが使えるカードであれば、世界中のVisa加盟店で支払いができます。「クレジット」はあくまで「後払い」を意味する支払い方法を指す言葉のため、厳密には「クレジットカードが使える店」という表現は不正確で、「Mastercardが使える店」「Visaが使える店」という表現のほうが適切です。

一般的にクレジットカードが使える店は、複数の国際ブランドに対応していますが、もし店がMastercardにしか対応していなければ、Visaのカードで支払うことはできません。実際に会員制スーパーのコストコは、日本ではMastercard以外のクレジットカードでは支払いができません。

国際ブランドの種類と特徴

現在、主要な国際ブランドとされているのは、Mastercard、Visa、JCB、アメリカン・エキスプレス、ダイナースクラブの5つ。中国を中心に普及する銀聯、アメリカを中心に普及するディスカバー(日本では申し込み不可)を入れた7つを主要国際ブランドとする場合もあります。

このなかでMastercardとVisaは、二大国際ブランドと呼ばれることもあり、加盟店数が圧倒的に多いことが特徴です。特に海外では、二大国際ブランドしか使えない店も少なくありません。前述したコストコのような例外は一部ありますが、「クレジットカードが使える店」と「MastercardとVisaが使える店」は、ほぼイコールと言っても差し支えありません。

なお、海外ATMでのキャッシングに関しては、Mastercardは「Mastercard」または「Cirrus」のマーク、Visaは「Visa」または「Plus」のマークが付いたATMであれば、現地通貨の引き出しが可能です(別途キャッシング利用枠が必要)。どちらも主要国であれば数多くの対応ATMが普及しており、どちらの国際ブランドにも対応したATMも少なくありません。

JCB、アメリカン・エキスプレス、ダイナースクラブは、旅行(Travel)や娯楽(Entertainment)のサービスに力を入れており、「T&Eカード」と呼ばれることもあります。しかし、MastercardやVisaはT&Eに弱いかと言われればそうではなく、特にゴールドカードやプラチナカードなどの上位カードでは、会員限定の優待が数多く用意されています。

国際ブランドの優待サービス

クレジットカードは決済以外にもさまざまな優待サービスを利用できますが、これにはカード発行会社が提供するサービスと、国際ブランドが提供するサービスがあります。国際ブランドが提供するサービスは、個人カードと法人カードで異なりますが、どちらもホテルやレストラン、レンタカーでの優待、海外旅行時の手荷物宅配やWi-Fiレンタルの割引などが代表的です。

JCBは日本発の国際ブランドということもあり、日本人の多い約60都市に「JCBプラザ ラウンジ」および「JCBプラザ」を設置。日本語が話せるスタッフによる現地情報の案内、レストランなどの予約手配、カード紛失・盗難時のサポートなどが受けられます。

このほかにも各国際ブランドごとに、随時キャンペーンを展開しています。世界的なイベントと連動したキャンペーンも多く、定期的にチェックすることをおすすめします。ただし、法人カードは対象外となる場合もあるので、参加条件をよく確認してから利用したほうがいいでしょう。

国際ブランドごとに異なる為替レート

海外でカード払いをした際は、各国際ブランドが定める基準レートに対して、カード発行会社が定める海外利用に係る事務処理コストを加算した金額が、実際の支払い額となります。たとえば100ドルの買い物をした場合、利用したカードの国際ブランドが定める当日のレートが1ドル=100円で、事務処理コストが1.63%であれば、実際の支払い額は1万163円となります。

基準レートは国際ブランドごとに算出方法が異なり、同じ日に同じ100ドルの買い物をしても、カードの国際ブランドが違えば、実際の支払い額も異なります。国際ブランドごとのレート差は大きなものではなく、利用日や利用国によってレートが最良となる国際ブランドも変わりますが、カード愛好家の間ではMastercardが最良になることが多いと言われています。

レート換算が行なわれるタイミングは、各国際ブランドの決済センターで支払い処理が行われた日となるため、必ずしもカードを利用した日のレートが適用されるとは限りません。また、事務処理コストに関してもカード発行会社によって異なります。一昔前までは各社横並びでしたが、近年は値上げをする会社が増えており、現在は1.6〜2.2%が一般的です。カード利用で貯まるポイントも踏まえて、総合的に判断する必要があります。

ラグジュアリーカードの場合は…
  • 世界で最も多くの場所で使えるMastercardを採用
  • Mastercardの最上位クラス「ワールドエリート」のサービスが使える
  • 海外利用時はMastercardのレートで、事務処理コストは1.63%、ポイント1〜1.5%還元

国際ブランドの選び方

1枚目は加盟店数の多いMastercardかVisaが無難

国際ブランドを選ぶ際は、決済としての機能と、サービスとしての機能に分けて考える必要があります。決済、すなわちカード払いをすることが目的であれば、加盟店数の多いMastercardかVisaを選んだほうがいいでしょう。特に海外では二大国際ブランド以外は使えない店も多いため、海外出張があるならMastercardかVisaのカードは必携です。それ以外の国際ブランドも使いたい場合は、2枚目以降に作ることをおすすめします。

なお、Mastercard、JCB、アメリカン・エキスプレスは、Apple Payを使えばiPhone(対応機種のみ)をタッチするだけでクレジットカード払いができるコンタクトレス決済を利用できます(対応端末のある店のみ)。ただし、カード発行会社およびカードの種類によっては、Apple Payに非対応の場合もあるので、利用したい場合は事前に確認しましょう。

海外利用するなら各国際ブランドの為替レートを比較

海外での利用が多いなら、為替レートで有利な国際ブランドを選んだほうがいいでしょう。先述したように為替レートはMastercardが最良となるケースが多いですが、利用する国によって傾向は異なります。Mastercard、Visa、JCB、銀聯は公式サイトで為替レートを確認できるので、利用する国が決まっているのであれば、一度比較してみるといいでしょう。

しかし、海外利用時の実質的な支払い額は、国際ブランドが定める為替レートよりも、カード発行会社が定める事務処理コストやポイント還元率のほうが、大きく影響するケースが多いです。いくら為替レートが優良でも、事務処理コストが高い、ポイント還元率が低いカードを使っていては意味がありません。3つの要素を総合的に判断することが大切です。

利用する会社の所在地や出張先も踏まえて選ぶ

サービス面を重視してカードを選ぶ場合は、サービス内容はもちろんですが、サービスの使いやすさにも気をつけましょう。どの国際ブランドでも似たような企業の優待サービスを利用できますが、それぞれ提携先は異なります。そのため優待が実用的かどうかは、会社の所在地や利用するエリアによって変わってきます

決済が必要ないサービスであれば、必ずしも法人カードでなくてもいいでしょう。法人カードの多くは年会費が必要ですが、個人カードでは年会費無料で持てるものも数多くあります。たとえば前述した「JCBプラザ ラウンジ」は個人カードでも利用でき、Wi-Fiの接続や手荷物一時預かりなどは決済の必要がありません。ただし、レストランの予約手配などを依頼する場合は、JCBのカードで支払う必要があります。普段の決済用と、優待サービスを使う用で、カードを分けることを考えてもいいでしょう。

ラグジュアリーカードの場合は…
  • 世界で最も多くの場所で使えるMastercardを採用
  • 国内外でApple Payのコンタクトレス決済が利用可能
  • 海外利用時はMastercardのレートで、事務処理コストは1.63%、ポイント1〜1.5%還元
  • Mastercardの最上位クラス「ワールドエリート」のサービスが使える

まとめ

国際ブランドによって利用できる店や受けられるサービス、さらに為替レートも異なるため、カードを利用する場所や目的によって、選ぶべき国際ブランドは変わってきます。会社の所在地や出張先なども踏まえて最適な国際ブランドを検討し、必要であれば複数枚のクレジットカードを保有して、目的に応じて使い分けることを考えてもいいでしょう。