年会費やポイントだけじゃない。法人カードの選定で注目すべき項目は?
法人カードを選ぶ際は、個人カードとは違った視点が必要で、選び方を間違えると、カードを使いたいときに使えない事態も起こりえます。また、法人カードを使う目的によっても、選ぶべきカードは異なります。どのような点をチェックすべきか、項目ごとに解説します。
法人クレジットカードの審査と条件
引き落とし口座によって審査やサービスが異なる
法人カードには利用代金を法人口座から引き落とすものと、法人代表者個人の口座から引き落とすものがあります。カードによっては片方しか対応していないものもあるので、まずは引き落としに使いたい口座を決めましょう。
また、カードは審査に通らなければ発行されませんが、法人口座の場合は登記簿謄本などの書類提出が必要になることが一般的。カード会社によっては会社の設立年数や決算状況の条件が設定されている場合もあります。
法人口座を使う場合は、支払い方法にも注意しましょう。個人カードのように分割払いやリボ払いなどは利用できず、キャッシングも使えないことがほとんどです。ただし、海外でのキャッシングのみ利用できるカードもあります。
法人向けラグジュアリーカードの場合は…
- 法人口座、個人口座、どちらにも対応
- 法人口座決済申し込み時に登記簿謄本や決算書類の提出は不要
- 設立初年度でも申し込み可能
- 法人口座でも海外キャッシングが利用可能
クレジットカードの国際ブランドをチェック
クレジットカードが使える場所は、国際ブランドによって決まります。現在、主要な国際ブランドはMastercard、Visa、JCB、アメリカン・エキスプレス、ダイナースクラブ、銀聯、ディスカバーの7つ。カード払いができる店であっても、店によって対応している国際ブランドは異なり、クレジットカードは原則として1枚につき1つの国際ブランドしか選べません。
7つのブランドのうち、利用できる店の数はMastercardとVisaの二大ブランドが突出しています。特に海外ではMastercardとVisaしか使えない店も多いため、海外出張をする機会があるなら、二大ブランドのカードを1枚は確実に持っておいたほうがいいでしょう。
また、クレジットカードは様々な優待サービスを使えますが、これにはカード会社が提供する優待と、国際ブランドが提供する優待があります。同じ名称で発行されているカードでも、国際ブランドが異なると受けられる優待も異なるので、申し込む前にはカード会社だけでなく、国際ブランドの公式サイトなどもチェックすることをおすすめします。
法人向けラグジュアリーカードの場合は…
- 国際ブランドのなかで最大の加盟店数を持つMastercardブランド
- Mastercardが提供する様々な優待を利用可能
仕入れや納税に使うならクレジットカード限度額に注意
法人カードを選ぶ際に見落としがちなのが利用可能枠、いわゆる限度額です。高額な仕入れや税金をカードで支払うなら、限度額の高いカードを選ばなければ、いざというときに限度額に達して使えないことも考えられます。月々の利用額がどの程度になるのか、あらかじめシミュレーションしておいたほうがいいでしょう。
限度額は審査によって決まりますが、どんなに審査結果が良好でも、上限が100万円に設定されているカードもあります。一般的にはゴールドカードなど年会費の高いものほど限度額は高く設定されているので、支払いさえできればいいという人でも、安易に年会費が安いカードを選べばいいというものではありません。
なお、法人税や源泉所得税、消費税などの国税は、クレジットカード納付が可能です。1万円につき82円の決済手数料が発生しますが、ポイント還元率が0.82%以上のカードであれば、銀行振込よりも得することになります。
法人向けラグジュアリーカードの場合は…
- 限度額に一律の制限なし
- 納税でも1〜1.5%のポイントを還元 ※2024年4月より税金決済時のポイント進呈方法変更
追加カードやETCカードの発行条件
法人カードであっても、カードには利用者の個人名が記載され、名前が記載された人以外の使用は認められていません。その代わり法人カードの多くは、従業員用の追加カードを発行できますが、カードによって発行できる枚数は異なります。従業員にもカードを持たせたい場合は、追加カードの上限枚数や年会費を確認しましょう。
業務で自動車を運転するなら、ETCカードの発行条件も確認しておいたほうがいいでしょう。発行手数料や年会費が別途必要となる法人カードもあります。車に乗る機会が少ない人でも、ETCカードの年会費が無料であれば、発行しておいて損はありません。
法人向けラグジュアリーカードの場合は…
- 1法人につき5枚まで発行可能
- ETCカードも無料で発行可能
キャッシュフローを改善するならクレジットカードの締め日・引き落とし日も意識する
クレジットカードの利用代金は、毎月特定の日に締められ、特定の日に支払い(引き落とし)を行ないます。この締め日・支払い日はカード会社によって異なり、必ずしも毎月1日から末日で集計されているわけではありません。
どのカードでも締め日から支払い日までの期間に大差はありませんが、毎月決まった日に入金や支払いがある場合は、締め日・支払い日を意識したほうがいいでしょう。たとえば毎月10日に仕入れをするのであれば、締め日が月初のカードを使ったほうが、支払いまでの期間が長くなり、キャッシュフローを良好にできます。毎月15日に入金があるなら、月末に引き落としのあるカードのほうがいいでしょう。
法人向けラグジュアリーカードの場合は…
- 毎月5日締め、27日に引き落とし
- 支払いは最長で53日後
クレジットカードポイントの期限や交換先
ポイントは還元率だけで判断しない
個人カードと同様に、ほとんどの法人カードも利用額に応じてポイントが貯まります。ポイント還元率は高いほうが好ましいのは当然ですが、Suicaへのチャージなどはポイント対象外としているカードも少なくありません。交通費にもカードを使いたい場合は注意が必要です。
ポイントの使い道や有効期限も忘れずにチェックしておきたい要素です。ポイントを会社の資産と考えると、不要なものにしかポイントを使えないのでは、経費削減にはなりません。キャッシュバックなど現金に近いものに交換できるポイントであれば、使い道に困ることはないでしょう。
飛行機での出張があるなら、航空マイルに交換するのも手です。急な出張の際など、直前で高い航空券しか選べない場合は、マイルを使ったほうが割安で航空券を手に入れられる可能性があります。ただし、マイル交換用の座席数は限られており、繁忙期などは手に入らないこともあるので、過剰な期待は禁物です。
法人向けラグジュアリーカードの場合は…
- ポイント還元率は1〜1.5%で、Suicaチャージもポイント対象
- 貯まったポイントはキャッシュバックやマイル交換にも使える
付帯保険は業務内容によって重視する項目が変わる
個人カードでは旅行傷害保険やショッピング保険が付帯するものも多くありますが、これは法人カードでも同様です。旅行傷害保険には自動付帯と利用付帯があり、前者はカードを持っているだけで適用され、後者は所定の旅行代金を事前にカードで支払った場合のみ適用されます。自動付帯であれば、取引先が旅行費用を負担している場合でも安心です。
また、旅行傷害保険は傷害治療や疾病治療など、項目によって最高補償額が異なります。出張で高価な機材などを持って行くことが多い場合などは、携行品損害に対する補償額が高いカードを選ぶといいでしょう。飛行機の乗り継ぎが必要な出張があるなら、出航や到着遅延に対して補償を受けられるカードを選んだほうが、余計な出費を抑えることができます。
ショッピング保険は、カードで購入したものが破損や盗難などの損害を受けた場合に補償を受けられますが、個人カードでは仕事に使うものは補償対象外となることもあります。比較の際は最高補償額や補償期間、自己負担額を見ることに加え、補償対象外の物品も確認しましょう。自動車、自転車、ノートPC、携帯電話などは補償対象外となることが多く、カードによって細かい違いがあります。
法人向けラグジュアリーカードの場合は…
- 旅行傷害保険は最高1億2000万円、航空機遅延に対する補償もあり
- ショッピング保険は年間最高300万円を補償
- ラグジュアリーカード ゴールドカードは交通事故傷害保険や賠償責任保険も付帯
クレジットカード優待・サービスの充実度とカード年会費
クレジットカードは支払いだけでなく、様々な付帯サービスを利用することができます。付帯サービスは各種優待や割引をはじめ、細かいものまで挙げればキリがありませんが、基本的には年会費が高いカードほどサービス内容は充実します。法人カードであれば業務を効率化できるか、経費を削減できるか、自身や従業員のスキルアップに使えるか、福利厚生になるかといった観点で評価することが大切です。
ゴールドカードの代表的な付帯サービスとして知られている空港ラウンジは、カードによって利用できる空港数が異なります。また、ゴールドカードでは国内主要空港でしかラウンジを使えない場合がほとんどですが、プラチナカードになると海外空港のラウンジが使えることもあります。カードによっては同伴者も無料でラウンジを使えるので、何人で出張することが多いか想定しておくといいでしょう。
プラチナカードの代表的な付帯サービスとして知られているコンシェルジュは、人対人のサービスのため相性があると言われており、実際に使用してみないと比較が難しいサービスです。既に利用している人やインターネットなどから、評判を調べてみることをおすすめします。なお、電話のみしか対応していないカードと、メールでも対応してもらえるカードがあります。
法人向けラグジュアリーカードの場合は…
- 国内空港ラウンジは同伴者1名も無料で利用可能
- 世界1200カ所以上の空港ラウンジが使えるプライオリティ・パスを無料発行可能
- コンシェルジュサービスは電話にもメールにも対応(Titanium Cardを除く)
クレジットカードのステータス・価値
カードのデザインやブランドはステータスを証明する
取引先の前でカード払いをするようなシーンでは、どんなカードを使っているのか見られているもの。審査を経て発行されるクレジットカードは、決済ツールであると同時に、ステータスを証明するものでもあります。カードを選ぶ際はデザインやブランドにも気を配ったほうがいいでしょう。
たとえばMastercardでは、下から順にスタンダード、ゴールド、チタン、プラチナ、ワールド、ワールドエリートの6段階のグレードがあります。カードに詳しくない人は、ゴールドカードくらいしかわからないかもしれませんが、わかる人には信用度を植え付けるツールとしても役立ちます。
法人向けラグジュアリーカードの場合は…
- 金属製カードにレーザーで社名を立体刻印
- Mastercard最上位グレードである「ワールドエリート Mastercard®」
カード年会費とカードのサービス
法人カードは年会費無料のものから、10万円を超えるものまでありますが、ほとんどは有料です。しかし、基本的には年会費が高くなるほどサービス内容は充実していくので、必ずしも安ければいいものではありません。
ここまで紹介してきたように、クレジットカードには決済以外にも様々な機能があります。決済さえできればいいという考えなら、年会費が安いカードでも問題ありませんが、付帯サービスの使い方次第では年会費が高いカードのほうが特になる場合もありますし、業務に役立つサービスを備えたカードもあります。カードの年会費は経費として計上可能なので、業績をアップさせるための投資と考えてもいいでしょう。
法人向けラグジュアリーカードの場合は…
- 年会費はチタンカード5.5万円、ブラックカード11万円、ゴールドカード22万円の3種類(全て税込み)
- 国内外で役立つ多数の付帯サービスを利用可能
まとめ
クレジットカードには決済機能以外にも、様々なサービスがあり、どの要素を重視して選ぶかが大切になります。まずはどの口座を引き落としに使うか決め、業務に使ううえで支障ない決済機能を備えているか判断して、目的に応じたサービスが使える法人カードを探していきましょう。