電子帳簿保存法とは?レシートや領収書を電子化して保存する方法

国税関係帳簿などの電子データによる保存を認めた「電子帳簿保存法」が2022年1月に改正され、レシートや領収書を電子データとして保存しやすくなりました。今まではその種類により5年から7年の原本保存が義務付けられていましたが、改正により保管の手間や経費、紛失の危険性などが大きく減ることになります。ただし電子データの保存には一定の条件があり、単にデータで保存しておけば良いというものではありません。電子帳簿保存法の規程に沿った保存法とはどのようなものなのでしょうか?今回は、電子帳簿保存法に基づいてレシートや領収書のデータを保存する方法を解説していきます。
※この記事は2022年1月の電子帳簿保存法改正後、2023年3月現在の情報をもとにしています。

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 平成10年法律第25号)とは、1998年に制定された国税関係の帳簿や書類を電子データ(電磁的記録)で保存することを認めた法律です。従来、法令上では帳簿や書類は原則として紙で保管することが義務づけられてきましたが、本法律により一定の条件を満たすことでこれらを電子化し、電子データで保管管理することが認められました。電子帳簿保存法では、以下のような書類がその対象として定められています。

国税関係帳簿

仕訳帳や総勘定元帳、売上台帳、仕入れ台帳、現金出納帳、固定資産台帳、賃金台帳、原価台帳などが国税関係帳簿に含まれます。

国税関係書類

国税関係書類は「決算関係書類」と「取引関係書類」に分かれます。

  • 決算関係書類 賃借対照表、損益計算書、試算表、棚卸表など
  • 取引関係書類 請求書、見積書、納品書、注文書、領収書(レシート)、検収書など※自己発行分及び受領分を保存する必要あり

電子取引

電子取引とは、インターネット上のWebサイトなどから取引情報をダウンロードした場合や、取引先から請求書や領収書などの電子データをメールで授受した場合などが相当します。

  • 請求書、見積書、納品書、注文書、領収書(レシート)など
    ※自己発行分及び受領分を保存する必要あり

たとえば確定申告などで使用した領収書は、原則5年から7年の保管を義務付けられています。一枚一枚は小さく薄い紙でも、まとまれば保管に膨大なスペースを必要とします。近年は情報社会となりペーパーレス化も進んでいるため、国税関係の帳簿や書類を保管する手間や経費の負担を軽減させることが社会から強く求められていました。

ただし制定当初(1998年)は、改ざんの恐れなどもあるため電子データとして保管する要件が厳しく、なかなか普及が進みませんでした。その後何回かの改正が繰り返され、2022年1月の改正では、より国税関係の帳簿や書類を電子データとして保存しやすくなりました。まずは領収書やレシートを電子化するための基本的な要件を紹介していきましょう。

電子保存に必要な条件 ― 領収書やレシートの場合

電子帳簿保存法に則って領収書やレシートを電子化し保存するには、以下の2つの方法があります。

  • スキャナ保存
  • 電子取引の電子データ保存

それぞれの詳細は、次のようになっています。

スキャナ保存とは?

スキャナ(scanner 走査装置)とは、センサーで対象となる物や紙を走査し、多次元の情報を一次元の情報として読み取る装置を指します。一般的にスキャナは、紙に描かれた絵や文字、写真などを読み取り、画像データとして取り込む場合に用います。スキャナ保存とは、国税関連書類をスキャナや複合機のスキャナ機能で読み取って電子データ化し保管する方法です。ただしスキャナ保存とはいってもデバイスの指定はなく、電子化の方法は厳格に定められてはいません。スマートフォンやデジタルカメラで撮影した画像でも認められます。

スキャナ保存で国税関連書類を保管するためには、以下の要件を満たす必要があります。また改正前の領収書等を電子保管したい場合は、別途税務署長の承認が必要となるので注意が必要です。

入力期間の制限

書類の受領後、または業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに入力すること(最長2ヶ月と7営業日以内)。

一定水準以上の解像度

200dpi以上の解像度で読み取ること

カラー画像による読み取り

赤・緑・青、それぞれ256階調(約1677万色)以上で読み取ること

タイムスタンプの付与

一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプを付与すること。ただし他の手段でも代用可能

解像度及び階調情報の保存

標題の通り。解像度及び階調情報の保存をすること

書類の大きさ情報の保存

受領者が読み取る場合、A4以下の書類の情報は不要

バージョン管理

訂正又は削除の事実及び内容の確認ができること

入力者等情報の確認

入力を行う者またはその者を直接監督する者に関する情報を確認できるようにすること

適正事務処理要件

  • 相互に関連する各事務について、それぞれ別の者が行う体制(相互けんせい)
  • 当該各事務に係る処理の内容を確認するための定期的な検査を行う体制及び手続(定期的な検査)
  • 当該各事務に係る処理に不備があると認められた場合において、その報告、原因究明及び改善のための
    方策の検討を行う体制(再発防止)

スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持

電子化した書類の記録事項と関連する国税関係帳簿との間において、相互にその関連性を確認できること

見読可能装置

14インチ以上のカラーディスプレイ、4ポイント文字の認識等ができる装置を設備すること

整然・明瞭出力

記録事項を速やかに、整然とした形式および明瞭な状態で出力できること

電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け

電子計算機処理システムの操作説明書を備え付けること

検索機能の確保

取引年月日や勘定科目、その他の項目で国税関係帳簿に係る電磁的記録の検索ができること

電子取引の電子データ保存とは?

電子取引の際にメールで受領した領収書やホームページからダウンロードしたもの、EDI(ネットワーク経由で発注書や納品書などの取引文書を交換すること)のデータ、ペーパーレスFAXなどを通じてやり取りされるデータ、またクレジットカードの利用明細(電子データ)なども電子取引データとなります。スキャナ保存のように機器を使って電子データ化する必要はありませんが、そのまま保管するのではなく以下の要件を満たすことが必要です。

電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け

自社開発のプログラムを使用する場合のみ

見読可能装置の備付け等

スキャナ保存と同様に、14インチ以上のカラーディスプレイ、4ポイント文字の認識等ができる装置を設備すること

検索機能の確保

取引年月日や勘定科目、その他の項目で国税関係帳簿に係る電磁的記録の検索ができること

改ざん防止

電子データには次のいずれかの措置を行い、改ざんを防止しなければなりません。

  • タイムスタンプが付された後のデータ授受
  • 授受後遅滞なくタイムスタンプを付すこと
  • データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用すること
  • 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け

スキャナ保存後のレシートや領収書の原本はどうする?

スキャナ保存の章で紹介した要件を満たしているのであれば、電子データ化した後の原本は捨ててしまってかまいません。要件の中で聴き馴染みのない言葉はタイムスタンプかもしれませんが、タイムスタンプとはどのようなものなのでしょうか?

タイムスタンプとは?

タイムスタンプは、物理的なスタンプではありません。タイムスタンプはデータの「存在証明」と「非改ざん証明」を行うもので、タイムスタンプ局(時刻認証局)が電子的に発行します。タイムスタンプ局とは、タイムビジネス認定センターなどにより所定の審査がなされ、時刻認証業務認定事業者(TSA)と認定された事業者を指します。このタイムスタンプ局が発行したタイムスタンプにより、電子データはその時刻に存在していたことと、以後改ざんされていないことが証明されます。

電子化したレシートや領収書にタイムスタンプが付与されている場合

タイムスタンプが付与されている電子データは、正式なデータとして認められることになります。したがってこれまで5年から7年、紙で保管する必要があったレシートや領収書は原本を保管する必要がなくなります。※ただしこれまでと同様、電子データは5年から7年の保管が必要です。

電子化したレシートや領収書にタイムスタンプが付与されていない場合

電子化したレシートや領収書にタイムスタンプが付与されていない場合は、従来通り原本の保管が必要になります。また他の要件が満たされていない電子データに関しても、原本を原則5年から7年保管する義務があります。

まとめ

2022年1月以前の電子帳簿保存法は税務署長の事前承認が必要であったり、タイムスタンプの付与が3営業日内に制限されているなど、実務上使いにくいものでした。2022年1月の改正ではこれらの条件が撤廃、または緩和され、ビジネスに適用しやすい制度となりました。電子データはバックアップも取りやすく、保管にスペースも必要ありません。電子データの保存に必要な要件をよく確認し、積極的に活用していきましょう。

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